いつだったか、誰かが言っていた。
空の向こうには“無”のセカイが続いているだけなのだ、と。
いきなり何を、と僕が呆れたように言えば、その人物はただ柔らかく笑って「寂しいよな」と言った。
何が寂しいのか。
その時の僕には理解できない言葉だった。
しかし、今考えれば嗚呼確かに。
理解できなくも無い、と思う。
彼の言ったとおり、確かに空が途切れた先には何も無かった。
“無”だけが、このセカイを占めていた。
それはサビシイ事。
このセカイのどこを探しても、嗚呼。
君は居ないんだ。

ねぇ、ボンゴレ。
僕はあの時、君の言葉を理解できなかった。
君も理解しなくて良いと言ったくれた。
だけど、それでも。
僕はその言葉の真の意味は理解しなくてはいけなかったんじゃないか。
嗚呼、君は意地悪だ。
最大の謎を遺して、僕の前から去るなんて。
その唇を開いて僕の名前を呼んでくれない君など、その瞳に僕を映してくれない君など……。
ただ冷たい君のからだが、僕の目の前で横たわっているのなんて見たくない。
でも、君から目を逸らすのは無理なんだ。
だけど、それもこれで最後にしよう。
やっと僕は、君の言葉の真の意味に気付けたのだから。



『なぁ、骸。空の向こうには“無”のセカイが続いているだけなんだ』
『……いきなり何を』
『なんかさぁ、寂しい、よな』
『意味が解らないのですが』
『良いよ、わからなくても』
『……何だか馬鹿にされてる気がするのですが』
『そんな事ないって。ただ、空の向こうを見てしまっても、そこに呑み込まれずに戻ってきてほしいなって』
『……君、本当は自分が何を言ってるのか解っていないでしょう』
『うーん、そうかもなぁ。上手く言葉に出来てないかもな』



――骸、オレの死に囚われるな。







ええ、君が望むとおりに。
だから、僕は最後に君に伝えよう。



「あいしていました」



そして、これからもずっと。









Io continuo desiderarlo



(君を想い続けます。だから、輪廻の先でまた会いましょう)